経済学でアドラー心理学を実践する(機会費用と埋没費用は人生を創造する原動力)

経済学でアドラー心理学を実践する(機会費用と埋没費用は人生を創造する原動力)

2019年11月4日

私は経済学も大好きで、人を幸せにしてくれる知恵やきっかけを与えてくれると信じています。

私の本職は経理。キャリアは会計監査から始まり、今は経理部で働いています。筋金入りの経理マンです。

先日、コストの種類について社内研修を開いたのですが、「あれ?これってめっちゃアドラー心理学?」と、ひとりで興奮してしまいました。

コストって聞くと、なんだかコスト削減とか、後ろ向きなイメージがありますよね?

でも実は、かなり前向きな視点もあるんです。

アドラー心理学にも通じるコストの概念を2つ紹介します。

機会費用

埋没費用

これらは「自分の人生は自分で創造できる!」という感覚が芽生えてくるコストの概念です。

めっちゃ実践的で、ビジネスにも生活にも、すぐに役立ちます。

機会費用

機会費用とは「ある選択をした時に諦めた2番目の選択肢のこと」

実際に実行した選択はBestな選択。諦めた選択肢はSecond Bestと考えることが出来ます。

いくつかの例を上げて説明しますね。シンプルな概念ですが、奥が深いので、多めに例を用意しました。

1つ目の例(マクドナルドで何を頼む?)

土曜日のお昼、どこに食べに行くか妻と話し合った結果、マクドナルドに行って、ビッグマックを食べました。その時の機会費用はなんでしょうか?

私の機会費用: フィレオフィッシュを食べること。1番のお気に入りはフィレオフィッシュなのですが、お腹が空いていたのでフィレオフィッシュを諦めて、ビッグマックにしました。ビッグマックを食べることの機会費用は、フィレオフィッシュを食べること、ということになります。

妻の機会費用: コメダコーヒーに行くこと。妻はコメダコーヒに行きたかったのですが、子供達がマクドナルドに行きたいと騒ぎ出したので、コメダコーヒーを諦めて、マクドナルドに行くことに同意しました。妻にとっては、子供達が望んでいるマクドナルドが、Bestな選択。子供達が騒いでいるのに強行していくコメダコーヒーがSecond Bestということになります。

機会費用は、ビッグマックの値段というわけではなく、その選択をしたことにより諦めた2番目の選択です。私と妻では、異なるのが特徴です。

2つ目の例(エコノミーそれともビジネスクラス?)

営業のためにイギリスへ出張することになりました。安いエコノミークラスで行くことに。どんな機会費用が考えられますか?

ビジネスクラスで行くのを諦めて、エコノミーで行くことになりました。つまり、機会費用はビジネスクラスとなります。

機会費用の視野を広げます。

ビジネスクラスで行っていれば、3件、商談を決められたかもしれません。エコノミーで行った為、疲れてしまい、商談件数と商談成功率が下がってしまいました。

数十万円高いビジネスクラスで行った方が良かったかもしれませんね。

逆に、ビジネスクラスで行くことにしました。どんな機会費用が考えられますか?

3件商談を決めることができました。しかしながら、予算が足りなくなり、もう一件行けるはずだった、シンガポールへの海外出張が行けなくなってしまいました。

ここまで考えると、ビジネスクラスで行くことの機会費用は、シンガポール出張ということになります。

エコノミーで行った方が良かったかもしれませんね。

エコノミークラスで行くべきか。ビジネスクラス行きべきか。機会費用のことを考えて視野を広げてみると、どっちがいいか、より深みのある分析ができます。

この世の中に無料なものは存在しない

3つの例には「この世の中に無料なものは存在しない」という考え方も入れました。機会費用の概念の1つです。

夜、家に帰ってくると、インターネットの「無料動画」で楽しむことが最近の日課。「無料」であることで、どんな機会費用が考えられますか?

無料動画の特長として「広告」があります。広告ばかりを見ることになり、なかなか満足する動画が見れず、時間ばかりが過ぎてしまう。そんな経験はありませんでしょうか。

無料動画の機会費用は、有料動画と考えることができます。広告を見る時間にできていた別の何か、と考えることもできます。金銭的には無料でも、時間を支払っていると考えると分かりやすいです。

時間だけではなく、有料ならではの満足できる動画も、機会費用に含まれます。

そう考えると、いっそのこと、プレミアム有料会員となり、待ち時間なし、広告なしで、満足できる動画を見たほうがいいかもしれません。

時間も節約でき、満足度も高くなります。故に、仕事や自己啓発も充実して、給料も上がり、プレミアム会員料をはるかに超えるメリットに繋がるかもしれません。

こうして視野を広げてみると、無料どころか、大きな代償を払ってることに気づきます。無料の恐ろしさです。

似たような例で「節約のためにかかった時間」があります。

毎日毎日、節約のため広告をみて、数十円でも安いちょっと遠くのスーパーで買い物をする。

節約が楽しければ良いのですが、その時間を使ってアルバイトをしたほうが、よほどお金が貯まるかもしれません。令和元年10月時点で最低賃金の全国加重平均は901円(厚生労働省ホームページより)です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

1時間パートアルバイトをしたら最低901円稼げます。節約をやめて浮いた時間で、仕事をした方がお金が貯まるかもしれませんね。

もちろん、現実はそんなに単純ではありませんね。ただ、単純でないからこそ、視野を広げて長期視点で考えると、違った選択が見つかります。

次は「アドラー式子育て」っぽい例です

子どもが、テーブルのふちに置いてある、こぼしそうなコップをみて「そんなところに置いていたら、こぼすでしよ!」といって、コップをテーブルの内側に移動しました。どんな機会費用が考えられますか?

そのまま見守っていたら、子供はコップを落としてしまうかもしれません。しかし、その失敗から、どうしたら良いかを学ぶことができます。コップをテーブルの内側に移動したことで、こぼさずにすみますが、子供が失敗から学ぶ機会を奪ってしまうことになりました。

一方で、もし、そこが高級レストランだったらどうでしょうか。わざわざ、高級レストランで失敗から学ばせる必要はないかもしれません。コップを落とすことで、周りの人に迷惑をかけるコストが発生するからです。

最後にもう一つ、機会費用に関連した、大切な概念を紹介します。アドラー心理学の自己決定性に繋がる考え方です。

唯一と思える選択肢でも、必ず、別の選択肢がある

例えば「電気を使用する」

代替品はなさそうですよね。電気は買わざるおえないです。

でも、視野を広げてみると、電気を使わない生活を選択することもできます。実際、そんな生活をしている人達もいますよね。

私達は電気を使わない生活を選択せずに、あえて、電気を使う生活を選択している、ということになります。常に自らベストな選択をしているという考え方です。

機会費用」に繋がる、アドラー心理学の「自己決定性」とは

以下人生が大きく変わるアドラー心理学入門  岩井俊憲[著]の引用です。(アドラー心理学の基本理論の1つです)

自己決定性

置かれた環境をどのようにとらえ、どのように対応するのかそれを決めるのは自分自身

人には、自ら運命を創造する力があります。決して環境や過去の出来事の犠牲者ではありません。アドラーは「人は自分の人生の主人公である」「人は自分自身の人生を描く画家である」といっています。

機会費用に目を向けると、視野を広げること、物事を別の角度から見ること、そして、自分が主体的に選択していることが意識できるようになります。

唯一の選択と思えるようなことでも、必ず別の選択肢はある。

機会費用は人それぞれ。

いくつかの選択肢の中から、あえて、その選択をしているのは自分。

これってまさに自己決定性です。

機会費用を意識することで、自分は自分の人生の主人公であり、自分の人生を創造していることになっているんです。

自己決定をしているという感覚は、幸せ度にも密接に関係しているという神戸大学の調査結果もあります。(リンクは以下です)

http://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html

いかがでしたしょうか、機会費用。シンプルな概念ですが奥が深いですよね。

機会費用を考えて、どんどん自己決定していきましょう。

次に紹介するのは埋没費用です。

機会費用に続き、地味なネーミングです。

埋没費用

埋没費用とは「意思決定に関係のない、取り返すことのできない過去の費用のこと」

2つの例で説明します。

1つ目の例は株の売買

10万円でマクドナルドの株を買ったとします。1ヶ月後に残念ながら7万円に値下がりしてしまいました。この株を売るかどうかの基準はなんでしょうか?

ある人は購入価格の10万円以下なので、まだ売らないと判断するかもしれませんが、埋没費用の概念では、購入価格である10万円は意思決定に関係ないと考えます。

今後、今の価格である7万円より、上がると思うか下がると思うかが、意思決定に関係していると考えます。7万円より上がるとおもえば、売らないし、下がると思えば、売ります。

7万円より下がると思っているのに、購入価格の10万円の購入価格に固執していては、損が広がってしまいます。このことを、株式の世界では「損切り」と呼ばれています。

10万円で購入した事実は取り返しのつかないこと。今、株を売るかどうかの意思決定には関係はありません。あくまでも、今後、上がると思うか、下がると思うかが、関連しています。

2つ目の例は、お寿司屋で、頼み過ぎてしまった大トロ

今日は年に一度の贅沢デー。高級なお寿司屋に行きました。お腹も空いていたのだ、大トロを5つ頼みました。しかしながら、あと3つ残っているところでお腹がいっぱいに。さて、あなたは残った大トロ3つを食べますか?

私がよくする間違えは、「もったいない」と思い「無理して食べてお腹を壊す」という結末です。

一方、埋没費用の考え方では、3つ多く頼んでしまった事実は取り返しがつきません。よって、「もったいない」と固執することをやめます。

そのかわり、今後、何ができるかに着目します。

・「もったいない」から、お腹を壊すリスクを承知で完食する(これも選択肢の1つです)

・お腹を壊したくないから、そのまま残す。

・妻にあげる

・持ち帰る

・もしかしたら、もっと別の妙案があるかもしれません。

頼み過ぎてしまったことを後悔したり固執するかわりに、柔軟に考えてみると、意外といい解決法が見つかりそうです。

こんなことを書いていますが、私は「もったいない」と思って、子供が残したものを食べて、お腹を壊すことが多いんです。

お腹を壊してもいいから「もったいない」という気持ちの解消を優先してしまうんですね。

ちなみに、この記事を書いてる時の出来事です。子供が残したバナナジュースとコロッケは、そのまま残しました。 やはり、お腹を壊すのは嫌なので! 埋没費用を意識した方が、いい判断ができました(^ ^)

埋没費用」の概念は、アドラー心理学の「目的論」に似ています。

アドラー心理学の特徴的なところに、人の行動には目的があるという概念があります。原因よりも目的に着目します。

例えば

あなたが私のことを無視したから、私もあなたのことを無視することにしたの!

「私も無視する」という行動の原因は「自分が無視されたから」かもしれません。

目的論的なアプローチでは

「私が無視する」という行動の目的は「あなたともっと話したいから」と考えます。

行動には常にポジティブな目的がある、と考えます。

「あなたともっと話したいから」という目的は、前向きな目的ですよね。

「あなたが無視した」という事実は変えようのない「埋没費用」であり、「あなたともっと話したい」というポジティブな目的に着目すると「自分もあなたを無視する」という行動は、あまり有効でないことに気づきます。

とはいえ、それはそれでしょうがないことなので、もし「あなたを無視する」ことを選んでしまったら、その時点で、それもすでに「埋没費用」。また仕切り直して、どうすれば建設的な選択になるかを考え直せばいいんです。

ポイントは、過去に執着し過ぎずに、未来志向という考え方です。もし、執着してしまったら、それはそれでしょうがないと割り切り、決め直すこと。

ちなみに私は後悔するタイプなので、こんな記事を書いてます。。。是非、同じように後悔をしやすい方は、参考にして頂ければ幸いです。

「機会費用」と「埋没費用」を意識することが、アドラー心理学の、自己決定性とポジティブな目的に着目することに繋がりました。

実は、経済学も人間の行動に仮説を立てて、理論化した心理学の一種なんです。

もしかしたら、経済学者の中には、アドラーの講義を受けていた方もいるかもしれません(^ ^)

「機会費用」と「埋没費用」の概念が、なにかのお役に立てれば幸いです。