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承認欲求について考えてみます。地味な記事です(^^)
(あくまでも、個人的にアドラー心理学を学び、体系的にまとめたものです。学び始めて3年ほどで、アドラーカウセラーでもありません。私の現時点での解釈で、アドラー心理学を実生活に活用するためにまとめたものです。)
しばしば、承認欲求は悪いもののように捉えられがちですが本当に悪いことなのでしょうか
先に結論を言うと、承認欲求は自然な欲求。共同体感覚へ向かう承認欲求は健全なもので、それを援ける関わりは勇気づけになります。
アドラー心理学の精神的なバロメーターとされる共同体感覚に照らし合わせて考えてみます。
人は生まれながらにして幸せになる力を持っている
アドラー心理学の中核的な考え方に、
人は生まれながらにして幸せになれる力(共同体感覚)を持っている。しかしながら、植物が水を必要なように、人には勇気が必要です。(かなりシンプルにまとめています)
というものがあります。
赤ちゃんが親にニコッと笑うのがその一例です。そして、親が微笑み返します。幸せな場面ですよね。赤ちゃんは、すでに、自分が幸せになり、周りを幸せにする力があることになります。確かに、赤ちゃんって、周りを幸せにする力、めちゃめちゃありますよね。
ここに承認欲求はありますでしょうか。自分が笑ったら、親から微笑み返して欲しいと考えるのが自然です。自分の存在と親が自分の仲間であるということを確認したいんだと思います。健全な承認欲求だと思います。
親も、赤ちゃんに笑ってもらえると、自分には価値があり、役に立っていると感じますよね。お互いの笑顔が勇気づけになって、お互いの承認欲求が満たされている瞬間です。
人間の2つの究極目標
現代アドラー心理学の考え方に、人間の究極目標は「自己肯定感の追求(Sense of Significance)」と「所属感の追求(Sense of Belongingness)」の2つがあります。(諸説あります。また、簡便的にSense of Significanceを自己肯定感と訳しています)
自己肯定感は、自分には価値がある。自分には能力があるという感覚。所属感は、みんな仲間。自分は役に立っているという感覚です。
ちなみに、アドラー心理学における勇気づけとは、この2つの感覚を勇気づけることをいいます。(シンプルにまとめています)
ありのままのあなたで十分魅力的(自己受容)、私はあなたの仲間(他者信頼)、あなたは役に立っている(他者貢献)、と感じるような勇気づけです。
赤ちゃんのニコッと笑うこと。そして、親の微笑み返し。まさに勇気づけになっています。
自己肯定感と所属感の追求の全てが建設的な方向というわけではない
自己肯定感と所属感への追求の方向性を「自分との向き合い方」と「他者との向き合い方」の2つ要素に分けて表にまとめました。どの方向が精神的な健康のバロメーターとされる共同体感覚に向かっているかが見えてきます。
共同体感覚へ向かう時
表の右上へ向かう動きです。自己肯定感も所属感も両方上がっています。自己肯定感はありのままの自分を受け入れる自己受容と共に高まり、所属感は他者信頼と共に高まります。
自己受容と他者信頼ができている状態で、他者や共同体のために役に立てると、貢献感を感じることができ、人は、幸せを感じることができます。
アドラー心理学では、このような感覚を共同体感覚と言います。不完全な部分も含め、ありのままの自分で価値があり、みんなは仲間と感じ、自分は役に立っていると感じられる感覚です。自己肯定感と所属感が同時に満たされ、貢献感が感じられた時、人は幸せを感じます。
さらにです!そんな時に真心を込めて「ありがとう」と言われたらどうでしょうか。貢献感かさらに高まるのが普通だと思います。
しかしながら、共同体感覚に溢れている時は、承認欲求が満たされなくても、落胆はしません。すでに貢献感で満たされているためです。
こちらの記事は、共同体感覚についてじっくり考えた記事です。合わせて参考にして頂ければ幸いです。アドラーの後継者でアドラー心理学の発展に多大な貢献をされたルドルフ・ドライカースの娘、エブァ・ドライカース・ファーガソンの有名なスピーチと共に考えて見ました。
共同体感覚チャートはあくまでも私の解釈で単純化したものです。共同体感覚についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照頂ければ幸いです。
自己犠牲と他者依存に向かう時
表の右下へ向かう力です。所属感は上がっていますが、自己肯定感が下がっています。自分を犠牲にして所属感を求めています。
他者を思いやる気持ちは高いのですが、自分のことを大切にしていない状態です。
所属感への承認欲求が自己犠牲へと向かい、他者中心の他者依存にもなってしまうかもしれません。
承認欲求が満たされないと大きな落胆に繋がり、さらに自己肯定感が下がる可能性があります。
長い人生、そんな時もあります。もし、自分を犠牲にしていたり、自分を責めていたら、そんな自分を可愛がってあげてください。きっと周りのみんなは、あなたの貢献に感謝しています。
自己正当化と他者攻撃に向かう時
表の左上に向かう動きです。自己肯定感は高まっているのですが、所属感は低くなっています。他者を責めて、自己肯定感を高めようとしている状態です。
自分のことは肯定できているのですが、他者のことを否定している状態です。自分は正しい。みんなが間違っている。と他者を攻撃することにより、自己肯定感を高めようとしています。
自分を認めて欲しいという承認欲求が満たされないと、さらに他者を攻撃してしまうかもしれません。
どうか、自分を高めようと頑張っているあなたを褒めてあげてください。きっと周りのみんなは、努力しているあなたの活躍をちゃんと見ています。
自己無力感と他者不信に向かう時
表の左下に向かう動きです。自己肯定感も所属感も低くなっていきます。排他感や孤独感があり、自己否定の状態です。
自分は無力だと思い、他者を信頼できません。
承認欲求は低く、もう、期待をしないで欲しいと思ってしまうかもしれません。
十分に頑張ってきたあなた。落ち込んだっていいんです。落ち込んでる自分を労ってあげてください。とことん落ち込んだら、簡単にできる、自分のやりたいことをしてみましょう。ちょっと高いハーブティーを飲む。チョコレートを買う。ちょっとだけ贅沢をしちゃいましょう。
そして、普段の生活の何気ない優しい出来事に目を向けて見るのもいいかもしれません。他人のちょっとした配慮。家族の行動。優しい世界が少しずつ広がってきます。
承認欲求は自然なこと。だから勇気が必要。
4つの方向性における承認欲求を説明しましたが、どれも自然な欲求だと思います。
人生山あり谷ありで、いろんな方向に人は向かっています。時には自己犠牲という手段を使って所属感を得たり、自分を正当化して他者を批判してしまったり。
だからこそ人には勇気が必要です。
人に批判的になっている人は、自分は仲間だと思えるような勇気づけを必要としています(私はあなたの仲間。あなたは役に立っている。助かります。ありがとう)
自分を犠牲にしている人には、あなたはそのままで十分魅力的と思えるような勇気づけを必要としています(あなたは魅力的。ただそこにいるだけで十分。一緒にいて心地いいです。ありがとう)
たとえ、言葉に出さなくても、そう思っているだけでも、きっと伝わります(意識が態度や行動に現れるため)。
勇気づけの輪が広がることを願っています。
参考資料
- ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート(上谷実礼)・・・他者と自分自身との関係の図を参考にさせていただきました。
- 「会社に行きたくない」と泣いていた僕が無敵になった理由(加藤隆行)・・・自己肯定感が低い人の特徴として攻撃的になる方と自己犠牲的になる方がいるということを参考にさせていただきました。
- 愛と勇気づけの親子関係セミナー・SMILE講座テキスト(ヒューマン・ギルド開発)・・・共同体感覚を自己受容、他者信頼、他者貢献の3つにまとめられていることを参考にさせていただきました。
- アドラー心理学の歴史的流れ(マリーナ・ブルフシュタイン博士による2019年開催のセミナー)・・・人間の究極目標はSense of SignificanceとSense of Belongingnessの2つに向かうことを参考にさせていただきました。